作物研究部門

作物見本園

大麦が成熟期になりました。


麦見本園の全景です。左端から12列が小麦、それより右の10列が大麦です。小麦には緑色が残っていますが、大麦はすっかり枯れ上がり、成熟期を迎えました。


例年は、大麦の各品種の成熟した穂をご紹介するのですが、新型コロナウイルス対応の出勤制限のため、優先度の高い試験研究業務のあとで見本園に防鳥網をかけたので、今年は多くの大麦が鳥に食われました。そこで、穂が出るのが遅かったために鳥の食害を避けられた3品種だけご紹介します。


大麦品種「シュンライ」。関東地域を中心に栽培され、精麦や麦茶原料として使われます。穂に実が6列つき、皮が実からとれにくい六条皮麦という種類に分類されます。写真は21cm×14cmで、3品種とも同じ縮尺です。


大麦品種「ファイバースノウ」。麦ご飯用としての評価が高く、北陸地域で主に栽培され、日本一生産量の多い六条皮麦です。


大麦品種「はねうまもち」。もち性の六条皮麦です。北陸地域を中心に栽培が増えています。


ここで、小麦と大麦の見分け方をご紹介します。これは大麦「ファイバースノウ」。見やすいように正面の列の実を取り去ってあります。中央の穂軸(すいじく、または、ほじく)から枝分かれした小穂(しょうすい)に、一個ずつ小花(しょうか)がついて、実が実ります。


こちらは未熟ですが、小麦「さとのそら」の穂軸から取った一つの小穂です。大麦では一つの小穂に小花が一つだけつくのに対して、小麦では複数の小花がつくので、見分けがつきます。この写真では小花が四つ見え、そのうち基部の二つが実っています。大麦でも小麦でも、すべての小花が実るわけではありません。


ここからは、これから成熟に向かう小麦の各品種の様子をご紹介します。品種「ゆめちから」。グルテンの力が強く、ブレンド利用に適したパン用品種です。


「きたほなみ」。北海道で栽培されている高品質な日本めん用の品種で、日本で最も生産量の多い小麦です。


「春よ恋」。北海道で栽培され、主として春に種を播くパン用品種です。


「農林61号」。関東~九州で広く栽培されてきた日本めん用の品種で、近畿~東海では今でも栽培されています。


「さとのそら」。日本めん用の新品種で、関東や東海地域で農林61号に替わって栽培が増えています。


「あやひかり」。関東~東海で栽培されている多収の日本めん用品種です。うどんの滑らかなモチモチ感が特徴です。


「ユメシホウ」。関東~東海での栽培に適した早生・多収のパン用品種です。


「せときらら」。西日本での栽培に適した多収のパン用品種です。


「ミナミノカオリ」。主に九州で広く栽培されているパン用品種です。


「農林10号」。昭和10年に育成された品種で、背が低く倒れにくいため、世界的に多収品種の育成に利用されました。


「Chinese Spring」。遺伝研究でよく使われる品種です。これを使い、農研機構が参加した国際研究で、コムギゲノムの塩基配列の解読が達成されました。


「セトデュール」。日本初のデュラム小麦の品種で、パスタに使われます。デュラム小麦は普通の小麦の祖先で、別の植物種に分類されています。