作物研究部門

作物見本園

芽が出た全22品種をご紹介します。葉先の水滴の話も。

11月17日に種を播いた全22品種の芽が出ました。手前から11列が大麦、それより奥が小麦です。

地面近くから見た様子。手前から11列が大麦、一番手前が大麦品種「ニューサチホゴールデン」です。

この写真の11列が小麦、一番手前が小麦品種「ゆめちから」です。小麦の葉は大麦より細い形をしています。全22品種をご紹介する前に、前回11月29日に掲載した「葉の先の水滴」について、少しお話しします。

葉先の水滴ができる様子を12月4日に観察してみました。未明ならば見られるかと思い、写した写真がこちら。午前4時40分ですが、既に水滴ができていました(小麦品種「ゆめちから」)。

この日、つくば市の日の出は6時32分。その時刻の様子です。水滴が少し垂れてきましたが、水の量はあまり増えていないようです。最低気温は零度だったので、地面が白くなっています。

前の写真を拡大しました。大きな水滴は、葉先の水孔(すいこう)から出た溢泌液(いっぴつえき)です。根から吸い上げた水が余分になると、このように排出されます。一方、多数の小さな水滴は、空気中の水蒸気が冷えて凝結した露または霜です。

水滴観察の再チャレンジ。同じの日の夕方4時10分の様子です。右の葉先近くに小さな水滴(泡)ができ始めていました(小麦品種「ゆめちから」)。

この日の日の入りは4時26分。その時刻には、右の葉先の水滴が大きくなり、左の葉先にも小さな水滴ができ始めました。

すっかり日が暮れた6時10分。左右とも水滴がずいぶん大きくなりました。このように、麦では日の入りの少し前頃から、余分な水分が葉先から出てきていました。

話を12月6日、全22品種の紹介に戻します。まず大麦からご紹介します。
左「ニューサチホゴールデン」:関東が主産地のビール用で、脂質酸化酵素リポキシゲナーゼを含まないため、香味が長持ちし、泡もちの良いビールができます。 中央「はるか二条」:病害、穂発芽に強く、九州で栽培されている多収の精麦用・焼酎醸造用品種です。
右「くすもち二条」:最も作付けの多い国産もち麦で、短稈で倒れにくく、多収です。九州で栽培が増えています。

左「ファイバースノウ」:麦ご飯用としての評価が高く、生産量の多い品種。北陸で主に栽培されています。
中央「シュンライ」: 関東を中心に栽培され、精麦や麦茶原料として使われています。
右「はねうまもち」:もち性で、北陸を中心に栽培が増えています。

左「カシマゴール」:縞萎縮病に強く、稈が中折れしにくい、多収の麦茶用品種です。
中央「ハルヒメボシ」:裸麦の中では精麦用として最も多く栽培されている品種。主に味噌用に使われています。
右「フクミファイバー」:瀬戸内が主産地のもち麦。機能性成分β-グルカンを普通の約3倍含み、変色原因物質プロアントシアニジンを含まないため、炊飯後に茶色くなりにくく、麦飯や大麦粉に使われています。

左「キラリモチ」:もち性で食味がよく、プロアントシアニジンを含まないため、炊飯後に茶色くなりにくい特徴があります。
中央「ビューファイバー」:機能性成分β-グルカンを普通の大麦の3倍近く含み、菓子などの原料に使われています。
ここまでが大麦です。

ここからは小麦11品種をご紹介します。
左「ゆめちから」:グルテンの力が強く、ブレンド利用に適したパン用の品種です。
中央「きたほなみ」:北海道で栽培されている高品質な日本めん用の品種で、日本で最も生産量の多い小麦です。
右「春よ恋」:北海道で栽培されていて、主として春に種を播くパン用品種です。

左「農林61号」:関東~九州で広く栽培されてきた日本めん用の品種です。穂発芽や赤かび病に比較的強いです。
中央「さとのそら」:日本めん用の品種で、関東や東海で農林61号に替わって栽培が増えています。
右「あやひかり」:関東~東海で栽培されている多収の日本めん用品種です。低アミロースで、うどんの滑らかなモチモチ感が特徴です 。

左「ユメシホウ」:関東~東海での栽培に適した早生・多収のパン用品種です。
中央「せときらら」 : 西日本での栽培に適した多収のパン用品種です。
右「ミナミノカオリ」:西日本で広く栽培されているパン用品種です。

左「ミナミノカオリ」:前出。
中央「農林10号」:昭和10年に育成された品種です。背が低く倒れにくいため、世界的に多収小麦品種の育成に利用されました。
右「セトデュール」:日本初のデュラム小麦の品種で、パスタに使われます。デュラム小麦はパンやうどん用の普通小麦の祖先で、同じコムギ属ですが別の植物種です。