作物研究部門

作物見本園

この奇妙なものは、ある花の拡大図です。


はじめにお詫びです。前回6月4日の記事で、オリーブ(モクセイ科)が見本園に7品種あるとご紹介しましたが、もう1品種が離れた場所にあるのを見落としていました。これがその品種「アスコラーナ」です。見本園のオリーブの中で一番大きく立派に育っています。樹勢は開張型で、実の苦みが少ないイタリア産の品種です。


元気がないので前回ご紹介を見送ったオリーブ2品種もけなげに生きているので、ご紹介します。品種「バルネア」。樹勢がややコンパクトで、実が多いイスラエル産の品種です。


品種「ネバディロ ブランコ」。葉がまばらにしか着いていないので、少し心配です。スペイン産で葉がやや薄く、枝葉が多い品種です。前回ご紹介した5品種を含め、全部で8品種のオリーブが見本園に植わっています。


アーティチョーク(和名チョウセンアザミ、キク科)の花が先週から咲き出しました。昨年より約2週間、一昨年より1週間以上早い開花です。


咲いている花が3輪あり、中央からやや右の下の方に黒っぽく見えるのが先週咲き終わった花、そのほかがつぼみです。


アーティチョークはアザミ属と別のチョウセンアザミ属に分類されますが、花の形はいかにもアザミの仲間です。とても大きく、直径が10~15cmくらいあります。たくさん見えている紫色の棒状のもの、一つ一つが小さな花です。小さな花が集まって一輪の花に見えるのは、キク科の花に共通した性質です。


アーティチョークの花を拡大してみました。ニョキニョキ生えているきれいな紫色の棒状のものは、実はめしべです。そのめしべの下の方に着いている白いつぶつぶは、花粉が集まったものです。


記事を書きながら、もっと詳しく見たくなったので、ここから先は2日後の6月18日に追加で撮った写真です。指で少しかき分けて、花の奥の方を見ました。太い薄紫色のものがめしべ、細く短い紫色のものが花びらです。


さらに拡大してみました。小さな花の一番外側が花びらで、基部では筒状の花びらが、紫色の斑点のあたりで五つに分かれています。


前の写真の上部を拡大しました。めしべを取り囲んでいる先の丸いヘラの様なものがおしべです。1個の花に5個ありますが、お互いにくっついています。白い小さなつぶは花粉です。


さて、アーティチョークの花に3匹の昆虫が集まって、花の中にもぐりこんでいます。2枚前の写真に写っている部分よりさらに奥に蜜腺があります。


この昆虫はコアオハナムグリといい、花粉や蜜が好物です。アザミ類は自分の花粉でなく、他の個体の花粉で実を結ぶ「他家受粉」を好むので、花粉を運ぶ虫が訪れるのは基本的にはよいことです。ただし、コアオハナムグリは、ミカン類では花についた際に脚で果実になる部分を傷つけてしまうので害虫になっています。


最後に、これは40日前、5月8日に写したアーティチョークの若いつぼみです。こうしたつぼみのウロコのような包片の基部や、包片を取り除いた芯の部分(花托)が食用になります。地中海沿岸が原産地で、ヨーロッパやアメリカ等では広く利用されています。