東北農業研究センター

短角牛って何?

なぜ短角牛?

食品の安全性への関心の高まりと食品の嗜好性の変化

環境ホルモンやダイオキシン→脂溶性のものが多いので脂肪の取りすぎに注意!脂っこいものより淡白なものへの嗜好性の変化(健康志向、肥満より筋肉質の身体)→霜降り信仰崩壊の可能性もある。赤身の肉はタンパク質の宝庫・・・

タンパク質の重要性

5大栄養素の中でも質・量ともに重要(代替品はない!)脂肪や炭水化物はどちらかというと現代人は取り過ぎ。その中でも人や豚・鶏が利用不可能な粗飼料を有効にタンパク質に変換できる草食家畜の重要性。 (食料競合を避けながら重要な栄養素であるタンパク質(しかも良質な)を供給してくれるまた、粗飼料中の主要成分のセルロースは地上に存在するバイオマスのなかでも最大のものである。

環境問題への対応

食物の物質循環を守ることで環境問題を克服することができる。過剰なインプットが現在の環境問題の最も大きな問題点。飼料は輸入しているが、ふん・尿は輸出することができない。「作物→食品→排泄物→たい肥→作物」が最も単純な物質循環。ここに草食動物が関与することでこの物質循環の効率を飛躍的に上げることが可能であるとともに、1)で述べたように人や豚・鶏とも飼料競合が少ない。放牧は最も環境に負荷の少ない生産形態である。

食料の自給率を向上させる

今や食料の自給率は42%、カロリーベースでは30%を切っている。食料は他の物資と違い代替え品は存在しない。また、生きていく上で必要不可欠なものである。自国で消費する食料は自国で生産するのは先進国の義務である。輸入品に頼っていると、国際情勢が変化したときに対応しきれなくなるおそれもあるし、日本が食料の国際価格を引き上げているという指摘もある。(食料を輸入し飢餓を輸出しているという指摘は10年以上前からある)家畜の飼料の自給率を上げることは食料の自給率を上げる最も効果的な方法のひとつである。以上の問題点を解決するためには日本短角牛による粗飼料多給型肥育技術の開発が最も有効である。

豚肉・鶏肉ではだめなのか?

人と食料が競合する豚や鶏よりも人が利用することのできない草を食べる草食家畜は重要。(豚や鶏が食べるものは人も食べられるが、草は食べることはできない)現在は輸入飼料が安いために、効率よく育つ豚肉や鶏肉の方が安いが、21世紀に向けて、世界人口の急増や食料不足になった場合、今と同様に安い飼料が手にはいるかどうかは疑問である。また、輸入飼料には遺伝子操作されたものやポスト・ハーベスト農薬の混入の危険性がある。

魚や野菜ではだめなのか?

漁獲量は1990年代のはじめにピークを迎えて、現在は減少に転じている。人類が必要とするタンパク質を海産物のみで補うことは不可能であることは、1995年頃の「地球白書」にも述べられている。もちろん、海に囲まれた日本にとって海産物は重要なタンパク源ではあるが、環境問題や国際問題も絡んでいるために、海産物のみに頼るのは危険である。また、植物性のタンパク質は動物性のものに比べて栄養価が劣っている、あるいは含有量が少ない等の問題があり、すべての人の要求には応えられない。(特に、赤ちゃんに与える粉ミルクは牛乳から作られている。今、粉ミルクが地球上から消えてしまうと、膨大な数の乳幼児の生命が危険にさらされるであろう)

黒毛和牛ではだめなのか?

黒毛和牛は日本短角牛に比べると放牧特性が劣っている。黒毛和牛は舎飼いで粗飼料はイナワラ、濃厚飼料多給で初めて本来の特性が生かされる牛である。その飼養形態はそれはそれでひとつの完成された形であると思う。餅は餅屋という言葉があるように、霜降り肉は黒毛和牛にまかせて、放牧を有効利用し粗飼料多給で赤身の肉を生産するのであれば、日本短角種が最もふさわしい。

輸入牛肉ではだめなのか?

食料の自給率の向上を目指すためには輸入に頼るべきではない。その分飼料の輸入が抑えられるではないかという意見もあろうが、余った日本の草資源はどうするのか?また、どのような飼料を与えられたのか分からない牛の肉の安全性は誰が保証するのか?