東北農業研究センター

東北農業研究センター育成のおすすめ麦品種

東北地域では、岩手県や宮城県を中心として主に水田転換畑で麦が栽培されています。2025年現在、東北地域で作付の多い小麦品種は、パン・中華めん用品種の「ゆきちから」と「ナンブコムギ」ですが、これらはグルテンの強さが十分でないうえ、それぞれ穂発芽しやすい、コムギ縞萎縮病に弱いといった弱点があります。東北農業研究センターでは、こうした弱点を改良した品種だけでなく、様々な特長を持ち加工適性を高めた品種も開発し、東北地域での麦の生産拡大を支援しています。

寒冷地向け育成品種6選

東北農業研究センター育成の寒冷地向けおすすめ品種をご紹介します。
  1. 製めん適性に優れた中力小麦「ナンブキラリ」
  2. 製パン適性に優れた強力小麦「夏黄金」
  3. グルテンの質が強靭な超強力小麦「銀河のちから」
  4. 製菓適性に優れる薄力小麦「ゆきはるか」
  5. もち性の小麦「もち姫」
  6. 地ビール醸造用二条大麦「小春二条」
麦の写真

製めん適性に優れた中力小麦「ナンブキラリ」 (育成年 : 2018年)

粉の黄色みが強く製めん適性に優れており、「ナンブコムギ」に替わりうる品種として期待されています。「ナンブコムギ」に比べ成熟期はやや遅いですが、多収です。コムギ縞委縮病に強い一方、赤さび病にはやや強いです。栽培適地は寒冷地の平坦地 (目安として根雪期間80日以下の地域) です。岩手県で産地品種銘柄に設定されています。 [トップへ戻る]

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「ナンブキラリ」のめんの写真
「ナンブキラリ」のめんは明るく
黄色みが強い

製パン適性に優れた強力小麦「夏黄金」 (育成年 : 2016年)

グルテンの質が準強力の「ゆきちから」と超強力「銀河のちから」の中間にあたる強力小麦です。優れた製パン適性を示し、ほとんどの種類のパンを製造できます。

「ゆきちから」と収穫期はほぼ同じで収量も同程度ですが、穂発芽しにくく赤かび病にも強いです。栽培適地は東北・北陸の平坦地(目安として根雪期間100日以内)です。宮城県、福島県、新潟県、石川県で産地品種銘柄に設定されています。 [トップへ戻る]

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「夏黄金」と「ゆきちから」で焼いたパンの写真
パンのふくらみが良い「夏黄金」

グルテンの質が強靭な超強力小麦「銀河のちから」 (育成年 : 2011年)

グルテンの質が強靭な特性をもつため、「ゆきちから」などの準強力の品種とブレンドすることで、製パン適性を高める効果を発揮します。また、中華めん等の原料やそばのつなぎにも適しています。

「ゆきちから」より収穫期はやや遅く収量は同程度です。穂発芽しにくく縞萎縮病にも強いです。栽培適地は東北・北陸の平坦地(目安として根雪期間80日以内)です。岩手県、宮城県、秋田県、鳥取県で産地品種銘柄に設定されています。 [トップへ戻る]

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「夏黄金」「銀河のちから」の草姿を「ゆきちから」「ナンブコムギ」と比較した写真
「夏黄金」と「銀河のちから」の草姿
「銀河のちから」ブレンドのパンの比較写真
「銀河のちから」のブレンド使用で
パンの膨らみが増す

製菓適性に優れる薄力小麦「ゆきはるか」 (育成年 : 2011年)

国内で初めての菓子専用小麦として育成されました。東北地域で菓子原料として使用されているめん用品種「キタカミコムギ」と比べ、「ゆきはるか」のスポンジケーキは比容積が大きく食感がよく仕上がります。

「キタカミコムギ」よりも収穫期は早く多収ですが、耐雪性はやや弱く穂発芽もやや生じやすいです。栽培適地は寒冷地の平坦地(目安として根雪期間80日以内)です。岩手県、新潟県で産地品種銘柄に設定されています。 [トップへ戻る]

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「ゆきはるか」のスポンジケーキの写真
スポンジケーキが均一に膨らむ
「ゆきはるか」

もち性の小麦「もち姫」 (育成年 : 2006年)

でんぷん中にアミロースを含まない小麦で、加熱によりよく膨張し食品にもちもち感やしっとり感を与えます。温度が下がっても硬くなりにくい特性があります。

「もち姫」は、寒冷地向けめん用小麦品種の「ネバリゴシ」に比べ、穂発芽がやや発生しやすいですが収量は同程度です。栽培適地は寒冷地の平坦地(目安として根雪期間80~90日以内)です。青森県、岩手県で産地品種指定銘柄に設定されています。 [トップへ戻る]

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「もち姫」ブレンドのパンの写真
市販化された「もち姫」ブレンドの食パン

地ビール醸造用二条大麦「小春二条」 (育成年 : 2008年)

二条大麦としては耐雪性が高く、麦芽エキスやジアスターゼ力などのビール醸造に関する適性をもつ品種です。

「小春二条」の耐雪性は、「ミノリムギ」「ファイバースノウ」等の寒冷地向け六条大麦より劣るものの、関東以西向けに育成されてきた既存の二条大麦に比べると、各段に高いです。栽培適地は寒冷地の平坦地(目安として根雪期間70~80日以内)です。 [トップへ戻る]

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「小春二条」のビール醸造適性を示す図
「小春二条」のビール醸造適性

平成16~17年度 育成地ドリル播栽培、分析は栃木県農業試験場栃木分譲に依頼。
谷口ら(2009年)の掲載データをもとに作成。