ジーンバンクの利活用

1. 遺伝資源を利用した品種改良や伝統品種の復活

農業生物資源ジーンバンクに保存されている遺伝資源は、品種名や原産地などの来歴データ、形態や病害虫抵抗性などの特性データとともに管理・保存されており、多様な観点からの品種改良や伝統品種の復活などに利活用されています。

■ イチゴ「桃薫」の誕生

「桃薫」は香り高く、果実の外観と収量性に優れたイチゴ品種です。ジーンバンクに保存されている、桃に似た香りの野生種を交配に使用しました。

イチゴ「桃薫」
(2011(平成23)年品種登録)

■ 「寺島ナス」の復活

「寺島ナス」は、江戸時代に美味しいと評された伝統野菜です。しかし、新品種が生まれ、昭和の初めには作られなくなっていきました。そこで、江戸東京・伝統野菜研究会がジーンバンクから「寺島ナス」の種子を取り寄せて、復活に向けた活動を始め、2009(平成21)年に復活を果たしました。

「寺島ナス」

■ マオリ族の伝統食「クマラ」の復活

マオリ族が主食とし、祭りや宗教儀式に用いていた「クマラ」(マオリ族の言葉でサツマイモの意味)は、同化政策のもとで品種が消失してしまいました。しかし、ニュージーランド国立作物研究所から譲り受けた「クマラ」の遺伝資源がジーンバンクに保存されていることがわかり、現地で再び栽培されるようになりました。

日本で開催された
「クマラ」の里帰り式
(1988(昭和63)年撮影)

2. 遺伝資源を効率的に解析できるコアコレクションの提供

コアコレクションは保存している多数の遺伝資源から、遺伝子や特徴が似たものを整理して、代表的な品種・系統を選定して構成された品種セットです。
コアコレクションを用いることで、何万もの系統のすべてを解析しなくても、効率的な育種や研究ができると期待されます。例えば、品種改良に必要な遺伝子を持つ品種の迅速な探索、遺伝子が作物の特徴に与える効果の予測などが可能になります。

世界のナスコアコレクション