東北地方では平野部の川や湖沼の周辺に一年を通じて生息する水鳥で、冬は大きな群れになっていますが、春にはオスとメスともに全身褐色で、くちばひの先が黄色いのが特徴です。
加害の特徴
湛水の田んぼに昼夜を問わずペアあるいは数羽の群で飛来し、くちばしで探りながら種籾や幼苗を食べたり、水かきのある脚で籾や苗を埋め込んでしまったりします。生息域である川や湖沼に近い田んぼほど被害が大きい傾向があります。被害は、播種直後から5葉期(播種後40~50日)くらいまでのことが多いのですが、それ以降も発生する場合もあります。被害を受けた田んぼには、水かきのある足跡が残り、籾の部分を食べられた苗が風下に吹き寄せられています。
被害回避のポイント
湛水直播を行う場合には、播種前(4月下旬~5月上旬)に生息調査を行い、カルガモがいない地域や少ない地域(5羽/1km以下)の、川や湖沼から1.5~2km以上離れた田んぼを選ぶことが大切です。
生息密度が高い地域や生息地に近い田んぼでは、乾田直播や播種後しばらくの期間、落水管理が可能かを検討します。ただし、排水が不良で湛水部分が残るとカモにより集中的に被害を受けます。また、落水状態にするとカモはほとんど飛来しなくなりますが、スズメやカラス類などほかの鳥に対する注意が必要となることもあります。カルガモの生息地に近い場所に、カモが食物を採れるような水面があると、直播田への飛来も少なくなると思われます。
カルガモの一年
冬
冬の間はハクチョウ類やほかのカモ類とともに群をつくっている
春 種籾を食べる
春になると営巣地近くにペアで分散する
一部は北方へ
夏
オス同士で小さな群をつくる
メスは水辺近くの草地などに巣を造りヒナを育てる
秋 登熟籾を食べる
秋になると集まって大きな群となる
北方から
カルガモの生息状況調査の方法
調査は、春、田んぼに水を入れる直前の時期に行うのが最も効果的であり、おもな河川や湖沼を対象に分布状況と個体数を調べます。
冬には大きな群れでまとまっているので個体数を数えやすいのですが、北海道以北から越冬のために来ているものも含むこと、狩猟期間の場合主要で捕られるものがあること、その群れがどれくらいの範囲からのものが集まったものなのかわからないことなどから、春になってオスとメスのペアで繁殖場所近くまで来ている時期に調べるのが確実です。また、田んぼに水が入ると田んぼの中まで広く調べなくてはいけなくなるので調査が大変になります。
春期のカルガモ生息数は、年による変動があまり大きくありませんが、北方へ移動すると考えられる群れが河口近くなどに残っている場合もあります。
カルガモによる被害発生と回避の目安
東北各地のカルガモ密度と鳥害程度
(鳥害程度については、各県の行政・研究機関から情報をいただきました。)
河川からの距離と被害率の関係
(山形県遊佐町での調査事例)
(被害率については庄内みどり農業協同組合遊佐支店の今野忠勝さんに調べていただきました。)