社会にインパクトのあった研究成果

農林水産研究成果10大トピックス 2002年選出

バイオマスガス化メタノール製造試験装置「農林グリーン1号機」の開発

でんぷんや糖分のみならず、繊維分、リグニンなどあらゆるバイオマスが原料になるガス化合成法によるメタノール製造装置が開発されました。(240kg/日の処理能力は現在最大規模)

この技術を用いれば、メタノール収率の高い米糠や杉のおがくずでは1トンから540kg、収率の低い稲わらやもみがらでも350-400kg、バイオマス生産量の大きいソルガムでは450kg程度のメタノールが製造可能と見込まれます。

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異常プリオン蛋白質を強力に不活化する新規酵素の発見

異常プリオン蛋白質(マウス脳の抽出物)を分解する酵素生産菌につき、明治製菓株式会社が長年にわたって収集して選抜した所持菌株を中心に、動物衛生研究所にてウエスタンブロッティング法を用いて広く検索した結果、当該蛋白質を強力に分解するバチルス(Bacillus)属の菌株を1株見出しました。次いで、本菌株が生産する酵素(ケラチナーゼ、プロテアーゼの一種)の酵素化学的特性を明らかし、現在、本酵素の遺伝子をコードするDNA配列を解読中です。

異常プリオン蛋白質は、熱に極めて安定であり通常の殺菌処理(120°C前後の蒸気を使用)では不活化されず、かつ通常の蛋白質分解酵素に対しても極めて安定です。
本研究成果により、異常プリオン蛋白質に汚染された可能性のある器具(例えば畜産分野における屠殺用器具、医療分野における手術用器具など)を容易に洗浄して感染を防止することができ、我が国におけるBSEの清浄化に資することができます。

タンパク質の摂取量は食事全体できまってくるので、主食であるコメからのタンパク質摂取量が減れば、その分、おかずのバラエティが増え、腎臓病患者の食事療法が楽になります。

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異常プリオン蛋白質を強力に不活化する新規酵素の発見 (プレスリリース)

「遺伝子が見えた!」-ナノレベルで世界初、新顕微鏡でDNAの直接観察が可能に-

走査型光プローブ原子間力顕微鏡(SNOM/AFM, Scanning near-field optical / atomic force microscope) を用いて、一本鎖DNAと二本鎖DNAの識別ならびにDNA上の遺伝子の位置を直接ナノレベル(10億分の1メートル、大腸菌の千分の一)で測定することに世界で初めて成功しました。

さらに蛍光色素を一分子ごとに検出することにも成功しました。SNOM/AFMは走査型トンネル顕微鏡(STM)の発展型で、試料の形と試料に結合した蛍光色素を同時にナノレベルで計測できる装置です。

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8ヶ月で開花するリンゴの開発に成功

果樹では種をまいてから花が咲くまでに通常7,8年かかります。果樹研究所は、組換え技術を利用して花芽形成に関与する遺伝子の働きを制御することにより、世界で初めて最短8ヶ月で開花するリンゴの開発に成功しました。

収穫までに長期間を要することが当たり前の果樹の常識を覆す画期的な成果として、品種の早期育成や画期的な高収益栽培技術の開発への応用が期待されます。

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リンゴ摂取による気管支ぜん息等アレルギー疾患予防効果の解明

気管支ぜん息患者のヒスタミン濃度は健常人に比べ有意に高いことが報告されていること、及び、リンゴペクチンによりヒスタミン濃度が低下することから、リンゴ摂取により気管支ぜん息等アレルギー性疾患に対する予防効果があると考えられます。

リンゴペクチン摂取により血液中の総コレステロール及びLDL-コレステロール、遊離脂肪酸 値が10%低下したことから、高脂血症等生活習慣病の予防効果も確認されました。

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抗生物質耐性遺伝子を使わない遺伝子組換え植物選抜技術の開発に成功

新規選抜マーカー遺伝子は組換えイネ作出のための基盤技術として従来から用いられてきた抗生物質耐性選抜マーカー遺伝子に代えて利用でき、ほぼ同等の効率で組換え体を選抜することが可能です。

この技術はイネ由来の遺伝子を用いたものであることと、可食部である米粒では選抜マーカー遺伝子の発現が抑制されることから、消費者の安心感の醸成に役立つと考えられ、今後の実用組換えイネ開発の過程で幅広く使用できます。

この選抜方法はイネだけでなく「ビスピリバックナトリウム塩」に耐性の無いほとんどの植物で利用可能であると考えられます。農業生物資源研究所で開発した遺伝子導入方法と本方法を活用することによって、海外企業等の特許に制約されず、消費者からも受け入れられやすい実用的な遺伝子組換え植物が作出できるようになると考えられます。

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紹介パネル[PDF38:KB]