社会にインパクトのあった研究成果

農林水産研究成果10大トピックス 2014年選出

飛ばないナミテントウの育成と利用技術の開発
-アブラムシ防除に強力でやさしい味方誕生-

ナミテントウは、施設野菜にとって重要な害虫であるアブラムシを大量に捕食する能力があるので、天敵として注目されてきました。しかし、施設内に放飼しても、通常飛び去ってしまうため、定着しませんでした。

農研機構 近畿中国四国農業研究センターは、国立大学法人 岡山大学、株式会社 アグリ総研、兵庫県立農林水産技術総合センター、地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所、奈良県農業研究開発センター、和歌山県農業試験場、徳島県立農林水産総合技術支援センターと共同で、アブラムシの防除に天敵であるナミテントウを有効利用するため、作物上によく定着する系統(飛ばないナミテントウ)を育成しました。2014年6月より生物農薬として販売開始されており、化学農薬の使用量の削減が期待されます。

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施肥量を大幅に削減できる「うね内部分施用機」のラインナップが完成
-露地野菜作で肥料施用量を30~50%削減可能-

うね内部分施用機は、キャベツ・ハクサイ等野菜苗を植付ける前に行う「うね立て作業」時に、肥料を"うねの中央部"にだけ線状に土壌と混合して施用し、うね間など無駄なところには施用しないトラクタ用作業機です。

農研機構 中央農業総合研究センターは、井関農機 株式会社と共同で、露地野菜経営面積や各種うね形状に対応したうね内部分施用機5機種を開発し、市販が開始されています。肥料をうねの中央部にだけ施用し、うね間には施用しないので、肥料の施用量を30~50%削減可能です。今後、露地野菜作における低コスト、環境負荷低減技術として普及が期待されます。

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資材不要で・素早く・簡単な穿孔暗渠機(せんこうあんきょき)「カットドレーン」を開発
-手軽な施工で抜群の排水性を確保-

日本では、雨水などが溜まり排水性に劣る農地が依然として多くあります。このような農地では、農作物の品質が低下し、適切な収量も確保できません。加えて現在、局地的な長雨や集中豪雨などが増加傾向にあり、農地の排水性を良好に保つ必要があります。

農研機構 農村工学研究所は、株式会社 北海コーキ、公益財団法人 北海道農業公社と共同で、資材が不要で、素早く、簡単に40~70cmまでの深さに暗渠と同じ排水機能をもつ通水空洞を作る穿孔暗渠機「カットドレーン」を開発しました。農家自身が資材を使わず暗渠を施工できるようになり、畑作物の湿害回避による生産性の向上が期待されます。

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植物体への超音波処理による病害防除技術を開発
-物理的刺激を与え、病気に対する抵抗性を誘導-

近年、食への安全・安心が求められていることから、農薬の使用量を減らした栽培方法に関心が集まっており、新たな防除技術の開発が重要な課題となっています。

独立行政法人 農研機構 生物系特定産業技術研究支援センターは、国立大学法人 東京農工大学と共同で、物理的刺激である超音波を利用した病害防除技術を開発しました。苗に超音波を照射することにより、その後に接種したイネいもち病やトマト萎凋病等の発病が抑制されます。現在、装置の開発中で、実用化が期待されます。

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