食品の安全性向上及び消費者の信頼確保のための技術の開発
食品を介して健康に悪影響を及ぼす可能性がある有害化学物質や有害微生物等のうち、特に農林水産省が優先的にリスク管理を行うべきとしている危害要因について、リスク管理に必要な分析・サンプリング法の開発、食品における含有実態や動態の解明、食品の汚染に影響を及ぼす要因の解明や汚染の低減を可能とする技術の開発などを行う。
特に、かび毒汚染低減のために、麦類赤かび病では、品種・系統のかび毒蓄積性に基づく開花期予測モデルの開発と検証、追加防除時期の解明等を行い、科学的根拠に基づき生産工程管理技術を高度化する。また、トウモロコシ赤かび病では、抵抗性品種の活用や収穫時期の調節等による耕種的な汚染低減技術を開発する。さらに、加工工程におけるかび毒の動態解明を行うとともに、多様なかび毒に対応した分析法の高度化と生体等を用いた毒性評価法を開発する。
また、農産物の生産段階におけるカドミウムの低減のために、野菜等について資材施用法等による実用的なカドミウム吸収抑制技術を開発する。また、大豆等のカドミウム低吸収性品種の活用と吸収抑制技術を組み合わせて可食部カドミウム濃度を3割以上低減できる技術体系を構築する。
さらに、食品の製造・加工・流通の過程で生成する有害化学物質については、前駆体濃度の低い原料農産物品種の選定、生成を低減するための原材料の貯蔵・保管技術、製造加工工程の管理技術、家庭で実行可能な調理方法の開発などに取り組む。
有害微生物等については、汚染の検知・予測のため、食中毒菌の迅速高感度な定量検出技術や高精度増殖リスク予測技術、新技術の蛍光指紋分析を活用した衛生管理指標と危害要因の非破壊検査手法等を開発する。そして、生食用野菜の生産段階での食中毒菌汚染の要因解明と汚染低減のための生産工程管理に資する技術開発、食品加工における従来殺菌技術の再評価とアクアガス・高電界等の新技術導入により、総合的な有害微生物の高効率・高品質制御技術の開発等を行う。また、貯穀害虫、食品の異物混入で問題となる害虫の生態を解明し、その予防・駆除技術を開発する。
農産物・食品の信頼性確保のため、米については主要品種の混合や加工品に対応した品種識別法を確立する。また、軽元素安定同位体比分析や蛍光指紋分析等の新技術を従来技術と組み合わせ、農産物・食品の産地等を高精度で判別する技術を開発する。さらに、低レベル放射線照射履歴の検知技術を開発する。GM農産物については、新規系統の検知技術の開発を進めると共に、リアルタイムPCRアレイ法等の新技術を利用した簡易・迅速・一斉検知技術、塩基配列解析による未知・未承認系統の推定手法等を開発する。また、分析値の保証に資する標準物質等を開発する。以上のような食の信頼性に関わる情報を消費者へ正確かつ効率的に伝達して正しい理解を広めるため、消費者の認知特性解明に基づく情報発信システムや農業の6次産業化にも対応できる双方向型の情報伝達システム等を構築するとともに、情報伝達効果の定量的評価手法を開発する。
普及成果情報
- 2015年 (主要普及成果)
- 流通未認可の遺伝子組換え作物を幅広く検出するリアルタイムPCRアレイ法
- 2015年
- 麦茶用炒麦に含まれるアクリルアミドの実態
- 2015年 (主要普及成果)
- 苦土石灰のうね内部分施用と低吸収性ダイズ品種による子実カドミウム濃度低減
- 2015年 (主要普及成果)
- 麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアルの改訂
- 2014年
- 「コシヒカリ新潟BL」の迅速判別手法の開発・分析キットの実用化
- 2013年 (主要普及成果)
- 食品・農産物の遺伝子検査に利用できるサンプルダイレクトDNA分析試薬
- 2012年
- 市販ポテトチップのアクリルアミド濃度モニタリング手法
- 2012年 (主要普及成果)
- LC/MS/MSによる実用的な麦汚染かび毒一斉分析法
- 2011年 (主要普及成果)
- 新系統遺伝子組換えダイズMON89788の定量分析法の開発および妥当性確認
- 2011年 (主要普及成果)
- 小麦赤かび病を適期に防除するための開花期予測システム
研究成果情報
- 2015年
- Fusarium asiaticumのかび毒(3A-DON)産生誘導、促進因子
- 2015年
- 放射線照射したカニのESR法による検知
- 2015年
- 遺伝子組換えトウモロコシ3272系統に特異的な定量検知法
- 2015年
- 安定同位体比分析による乾シイタケの原産地判別
- 2015年
- 浅漬け原料白菜および白菜漬けに混入した大腸菌O157の挙動
- 2015年
- バイオマーカーによるかび毒の毒性評価法
- 2015年
- 飼料用トウモロコシのフモニシン汚染リスクを低減するための栽培管理法
- 2015年
- 台木用ピーマン品種を用いた接木栽培で可食部カドミウム濃度が低減する
- 2014年
- 新規に同定されたトウモロコシ赤かび病菌Fusarium asiaticum
- 2014年
- 赤かび病菌感染コムギにおいて濡れ時間はかび毒蓄積リスクの評価指標になる
- 2014年
- 塩化カルシウム土壌抽出法による野菜可食部カドミウム濃度の品目間差異の推定
- 2014年
- リスク情報の理解度に影響する説明表示法
- 2014年
- 遺伝子組換えイネ検出のためのイネ種共通内在性配列の検討
- 2014年
- 定量PCR法を活用した食中毒菌の増殖特性評価
- 2014年
- 国産めん用小麦の加工工程におけるかび毒ニバレノール(NIV)の動態
- 2013年
- 安定同位体比と微量元素組成を用いた湯通し塩蔵ワカメの産地判別高度化
- 2013年
- 酵母細胞を用いてDONおよびその誘導体の毒性の違いを評価する
- 2013年
- 六条大麦(裸麦)の追加防除によるかび毒蓄積低減
- 2013年
- 家畜ふん堆肥の単年施用によるホウレンソウの可食部カドミウム濃度低減
- 2012年
- 麦類における出穂後尿素葉面散布は赤かび病の発病とかび毒蓄積に影響しない
- 2012年
- 赤かび毒デオキシニバレノールとニバレノールの毒性は異なる
- 2012年
- 新規かび毒配糖体の検出
- 2012年
- 土壌pH上昇による野菜可食部カドミウム濃度低減効果の品目間差異
- 2012年
- 放射線照射検知の信頼のおける指標化合物2-アルキルシクロブタノン類
- 2012年
- 安定同位体比分析による国産・中国産および韓国産湯通し塩蔵ワカメの産地判別
- 2011年
- 加熱した食用油に生じる有害アルデヒド4-hydroxy-2E-nonenalおよび類縁化合物4-hydroxy-2E-hexenalの定量分析法
- 2011年
- スタック品種の混入に影響を受けない新規組換え体混入率評価法の確立