病害虫のリスク管理と植物検疫高度化のための研究開発

我が国農産物の輸出を促進するため、輸出先国のリスク評価にとって重要となる我が国既発生の病害虫の農産物への寄生性や輸出先国での発生状況など当該病害虫の生態等の科学的知見を得るとともに、速やかに農林水産省に提供する。加えて、輸出相手国が求める植物検疫や残留農薬基準などの衛生と植物検疫に関する保護水準を満たすため、物理的防除や耕種的防除を組み合わせた輸出型防除技術を開発するとともに、病害虫防除の水準を評価する手法を開発する。一方で、我が国未発生の作物病害虫については、海外からの新規病害虫の侵入を阻止するために、植物検疫において利用可能なリスク評価に基づく迅速な検出・同定技術を開発する。また、検疫有害動植物であるジャガイモシロシストセンチュウ、ウメ輪紋病や、キウイフルーツかいよう病、トビイロウンカ等、植物防疫行政上重要な病害虫の国内での発生や、気候変動等に起因するこれら病害虫の発生拡大に対応した適切なリスク管理のための防疫対策技術として、高精度な発生予測技術、検出・診断法、必要な防除技術を開発する。薬剤の連用による薬剤抵抗性病害虫個体群の発生を防止するため、ゲノム情報を活用した薬剤抵抗性病害虫の管理技術や薬剤抵抗性病害虫の発生・拡大を正確かつ迅速に予測する技術を開発する。さらに、海外からの病害虫の侵入を阻止する技術、植物検疫上重要な病害虫の防疫対策技術や病害虫の発生・診断に関わる情報は、速やかに農林水産省、都道府県の病害虫防除所へ提供し、植物防疫行政へ貢献するとともに、国際植物防疫条約(IPPC)によるリスク評価手法や検出・同定技術の国際基準の設定にも貢献する。開発した輸出型防除技術や薬剤抵抗性を発達させない薬剤使用技術は、それぞれ行政や普及組織等による指導、講習等を通じて生産現場への普及を図る。

研究成果情報

2020年 遺伝資源センター
植物病原微生物の分類・同定支援システム
2020年 農業技術革新工学研究センター
サーチライトトラップを用いたハスモンヨトウによるダイズ被害の予察
2020年 生物機能利用研究部門
ナミハダニの殺ダニ剤3種の抵抗性原因遺伝子変異の同定
2020年 九州沖縄農業研究センター
イミダクロプリドで選抜したトビイロウンカにおける寿命の短命化および産卵数の減少
2020年 九州沖縄農業研究センター
クロラントラニリプロールによるアリモドキゾウムシ・イモゾウムシの省力的防除
2020年 九州沖縄農業研究センター
マルチプレックスPCRによるイネウンカ類3種の簡易識別法の開発
2020年 中央農業研究センター
アブラナ科野菜からの黒腐病菌、斑点細菌病菌の特異的検出法
2020年 中央農業研究センター
アブラナ科野菜からの黒斑細菌病菌の特異的検出法
2020年 中央農業研究センター
造形樹輸出の障害となるオオハリセンチュウを判別するPCRプライマー
2020年 東北農業研究センター
コナガのジアミド系殺虫剤の抵抗性遺伝子の起源と抵抗性リスクレベル
2020年 北海道農業研究センター
LAMP法によるジャガイモシストセンチュウ類2種の識別技術
2020年 北海道農業研究センター
日本産ジャガイモ黒あし病菌の遺伝的多様性と個体識別による感染経路の推定
2020年 北海道農業研究センター
Dickeya chrysanthemiによるジャガイモ黒あし病の発生
2019年 生物機能利用研究部門
コナガのジアミド剤抵抗性原因変異の同定
2019年 生物機能利用研究部門
ネギアザミウマのピレスロイド剤抵抗性に関連する新規変異の同定
2019年 生物機能利用研究部門
チャノコカクモンハマキのテブフェノジド剤の抵抗性個体を判別する遺伝子診断法
2019年 果樹茶業研究部門
Candidatus Liberibacter solanacearumはニンジンにおいて種子伝染する可能性は著しく低い
2019年 九州沖縄農業研究センター
イミダクロプリド抵抗性トビイロウンカにおけるネオニコチノイド系殺虫剤に対する薬剤抵抗性発達程度
2019年 九州沖縄農業研究センター
シアントラニリプロール施用によりサツマイモ塊根へのアリモドキゾウムシ被害を低減できる
2019年 中央農業研究センター
ネギネクロバネキノコバエの同定を確実にするための簡易な非破壊的DNA抽出法
2018年 農業技術革新工学研究センター
南西諸島で誘殺されたミカンコミバエの推定された飛来源と国内分散の可能性
2018年 生物機能利用研究部門
イネ黒すじ萎縮ウイルスの主要な寄主植物
2018年 九州沖縄農業研究センター
トビイロウンカのイミダクロプリド抵抗性は優性遺伝する
2018年 九州沖縄農業研究センター
カンキツグリーニング病原細菌の高効率人工培養法
2018年 中央農業研究センター
疫学モデルによる植物病原菌の生態学的分類と根絶条件
2018年 中央農業研究センター
DNAマーカーによるネギネクロバネキノコバエの近縁他種からの識別法
2017年 種苗管理センター
増菌培養とPCR法を組み合わせた土壌からのジャガイモ黒あし病菌検出法
2017年 農業環境変動研究センター
異なる作用機構の殺虫剤の「世代内施用」が害虫の抵抗性発達遅延に効果的
2017年 生物機能利用研究部門
ワタアブラムシのチトクロームP450遺伝子のネオニコチノイド剤抵抗性への関与
2017年 果樹茶業研究部門
ファイトプラズマとキシレラのユニバーサル同時診断法
2017年 九州沖縄農業研究センター
イネ南方黒すじ萎縮ウイルスのジャポニカ品種に対する感染性と病徴
2017年 中央農業研究センター
イネいもち病菌のMBI-D剤耐性およびQoI剤耐性簡易同時診断
2017年 中央農業研究センター
植物検疫対象のポスピウイロイド全8種の網羅的検出法
2017年 中央農業研究センター
日本で発生する全てのトスポウイルスを検出できるユニバーサルプライマー
2017年 北海道農業研究センター
ジャガイモ黒あし病菌Dickeya dianthicolaの同定と特異的検出法
2016年 果樹茶業研究部門
ネオニコチノイド剤抵抗性ワタアブラムシの遺伝子診断法
2016年 九州沖縄農業研究センター
ウイルス流行モデルによるイネ南方黒すじ萎縮病の発生要因と発病株率の推定
2016年 九州沖縄農業研究センター
検疫有害植物Candidatus Liberibacter solanacearumを検出できる新規プライマーセット
2016年 中央農業研究センター
野外の粘着トラップに捕殺されたコナガ成虫は8日以内までPCRに利用できる
2016年 北海道農業研究センター
Pectobacterium carotovorum subsp. brasilienseによるジャガイモ黒あし病の発生